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2009年12月29日 (火)

SA3。

SIGGRAPH ASIA 3日目。


朝からセガさんの社内トレーニングに関するセッションに出てきました。3時間くらいの長いセッションでしたね。

詳しい内容は、
http://game.watch.impress.co.jp/docs/event/20091219_336981.html
ここに載ってますね。いや、あんまり詳しくないな。しかも恣意的というか好意的というか、あるいは美辞麗句的と言うか。まあこういう記事だからしかたないか。 まあいいや、ここを読めばだいたい何を言っていたのかわかる感じなので俺は詳しくは書きません。


最初のお方が出てきて新入社員の研修について語ってくれたのですが・・・・。

俺としては、どういうコンセプトでその研修をするのか、新人はどういうところでつまずきやすいかなどを細かく語ってほしかったんだけど、もちろんそういう話もしてくれましたがそれは少しで、大半の時間は「俺達に研修を施している」部分に費やされた気がするのです。 「新人にはゲームグラフィックの基礎的なことを教えます。Mipmap とはですね。 ノーマルマップとはですね。 カゲをテクスチャに描き込むとライティングを変えられないですよね。テクスチャ増やすのも嫌ですしね。だから頂点カラーに描き込むんです」などと、mipmap やノーマルマップやデータ節約のしくみやらなんやらを、簡単にではあるけれど、俺達に説明するわけです。新人研修の超簡易版を SIGGRAPH の会場でやっているかのような感じがしました。俺のようなゲームグラフィックスの素人にはそれはそれで面白かったんですが、受講者の大半はゲーム屋さんでしょうから、そんなことはわかってるよー 俺達に mipmap の説明しなくてもいいよーって思ったんじゃないのかなあ。


コンセプト的なことでは、「プログラマはオプティマイズへの意識が必要。アーティストと協議をして進めるという意識が必要」 とか 「ゲーム機の制限を知らないとダメ。実現不可能なことを計画しても無駄。コスト感覚が必要」 とか 「どっかから拾ってきたテクスチャとかを安易に使わない。そういう知的財産権のことも教える」 とか 「情報ソースの大半は英語なので英語ができることが重要」 とかそんな感じでしたかね。 こういう内容を新人に教えることがゲーム会社にとってどれくらい特別なことなのか、あるいは一般的なことのか俺にはわかりませんが、俺は 「んーー ごく当たり前のことばかりだな」 と正直思いました。目からウロコが落ちるような新しいコンセプトや方法を持っているわけではなく、ごくごく普通のことを、ただし大会社だけあってすごくシステマチックな枠組みを作って教えているんだな、と思ったのですがどうでしょうかね。

まー、全体の印象として残ったのは、「わあ。ほんとに過保護なんだなあ」 ということなんですがね。いや、別にケチつけているわけではありません。これくらい大規模な会社で大規模プロジェクトを進めるには、きっと必要なことなのでしょう。 でも俺としては、そんなこと自分でやれよ、そんなこと会社からコトバで教わっても痛い目遭わないと覚えねえよ、だからどんどん痛い目に遭わせてあげればいいんじゃないの、くらいに思ったんですね。俺らしいな。すいません勝手なこと言ってます。


それとこれは本題から外れますが、CG制作の実作業者のことを 「デザイナー」 と呼ぶのは、ほんとうにもうやめた方がいいのではないかと思いました。日本ではデザイナという言い方が多いですが、世界的にはデザイナと言った場合デザインをするという独立した職種の人を指し示すわけで、アニメータもモデラも何もかも一緒くたにして呼ぶ場合は、大抵は「アーティスト」 ですよね。今回の講師のお方はデザイナと呼んでいて、逐次翻訳の人もその部分は Designer と訳していたので、英語翻訳で聞いた人はもうわけわからん状態だったんじゃなかろうかと想像しています。ゲーム屋さんだから「ゲームデザイナ」という「アーティスト」とは別の役職の人もいるわけで、その話が出たときにもやはり翻訳の人は Game Designer と訳しているもんだから、こりゃもうわけわからんです。翻訳の人と事前に打ち合わせをして、デザイナというコトバが単体で出てきたら Artist と訳してね、とか、そういう設定になっていれば良かったのになあと思いました。 ま、ともかく、デザイナはもうやめましょうよ。統一した方がわかりやすいですよ。 デザイナっていったい誰が言い始めたんだろう。「CGデザイナー」って、すごく謎の響きですよね。何をデザインする人なんだろう?って首をかしげられます。実際にその経験あります。




次のお方が出てきて、リアルタイムシェーダを題材に社内教育のことを語ってくれる・・・・・はずだったんだけど、こちらも最初のお方と同じく、我々受講者にリアルタイムシェーダの基礎を講義していたという感じでした。 同じく、シェーダ開発なんてまるで知らない素人の俺にとっては技術的にはけっこう面白い話ではありましたが、社内教育としてどんな考えに基づいてどうやっているのかという部分は、あまり語られませんでしたね。


テクニカルアーティスト=プログラミングやシェーダ開発などにもある程度以上造詣が深いアーティストのこと。
最近はテクニカルアーティストの存在が重要。
プログラマに頼らずとも、自分で気軽にパラメータをいじれたりして効率が良い。
また、シェーダを学ぶことで表現の幅が広がる。これが実は一番重要。
だからアーティストの人も、テクニカルなこと(プログラマ寄りなこと)が分かったほうが有利ですよ。
で、社内教育方法としては、イントラネットで誰でも見れるようにドキュメントを用意してます。
以上。


でした。これ以外の話は全てリアルタイムシェーダ開発そのものの話でした。ライトベクトルと法線ベクトルの内積がどうちゃらで、とかいう話ね。

ま、シェーダ開発の話を通して 「ほら、アーティストでも、テクニカルなことがわかればここまでできちゃうんですよ」 ということが言いたかったのだろうとは思いますが、お題は「教育」についてなんだから、「うちはこうやってますよ」って感じで、できない人をどうやってできる人にさせるかについて語って欲しかったですね。それについては 「社内ネットで見れるようにしてます。以上」 なので、ちと残念でした。技術話としては個人的には面白かったですよ。へーーこういう概念なんだあ、って初めて知りましたからね。でもそれが主題になっちゃ、ちと主旨と違う。

ちなみにこの講師のお方はデザイナではなくアーティストと呼んでいましたね。スヴァらしい。





そして3人目のお方が出てきて、クローンモニタリングなる教育環境と、アニメーションテンプレートなるモーション教育方法の話をしてくれました。この3つめだけは、ちゃんと教育ということについて語ってくれました。実に面白かったっす。 でも、うーむ、すいません、俺にはトンデモ理論か超過保護環境にしか思えませんでした。実に面白いけど、真似しようとは思わなかったという。


クローンモニタリングは、上のリンクの記事に書かれていますね。お互いの作業がリアルタイムでセカンドモニタに見えるという。 いやー、すげえ。すげえなあ。ほんとにこんなことやるんだ。  効果は大きかったとのことですが・・・。


入社してしばらく経つと成長曲線は横ばいになる。つまり成長が鈍くなる。その壁を打破するためには、人からテクニックを盗むことが必要だ。だから他人の作業をモニタで盗み見てどうやっているのか研究しろ。そこからテクを盗め。というのが主旨なわけですね。


 他人からテクを盗むことが必要 → 超あたりまえ
 その方法としてクローンモニタを設置 → 謎


うーむ、上手い人のモニタをのぞかせてもらったり、質問をしたり、議論をしたりして、そこから何かを得る・盗むってのは、ちゃんとやる気のある人なら誰だって普通にやってることじゃないですか。 例えば他人がチェックを受けているところを横から見ていたりすると、実に勉強になります。 そんな当たり前のことでも、モニタがあって常に覗き込める環境があると、やっぱり効率良く吸収できるってことでしょうかね。まあそうなんでしょうね。そういう主旨の話でしたから。


でもなあ、そこまで環境を整えてあげなくても、やる気さえあればこれに近いこと誰でもやりますよ普通は。そういう意味ではハードウェア環境を整えているというだけに聞こえなくもないんだよなあ。それとも、やる気のない人をやる気にさせるためのシステムなんだろうか。でもやる気のない人に投資してやる気にさせるなんて、それこそコスト効果最悪の教育方法ですよね。うーむ。 やる人は黙っててもやるし、ダメな人はこんな環境があってもダメだと思う俺は頭固いですかそうですか。

でも顕著に効果が出てるって言うんだからすげえよなあ。顕著に出てるそうですよ。


問題点は、

・慣れちまうと誰も見なくなる
・ベテランの人は嫌がるので新人同士しかモニタリングできない

などなどだそうです。

・・・・この辺がね、クローンモニタリングという方法の提案が本気なのかネタなのか、俺としては真面目に戸惑ってしまったのですよ。 ベテランの人のテクを盗めないんじゃ意味なくない? そりゃ新人同士のモニタリングでも、一人で誰とも関わらずに作業するよりは遥かにいいでしょうけどね、でも成長曲線停滞の打破が目的でしょ? なら、一番盗む価値のあるベテランのテクを見れるようにしないとダメなんではないのか、と思ったんですね。 数ヶ月で慣れちゃうと誰も見なくなるってのも・・・・つまり一時的に成長曲線は上向きになるけど、慣れて見なくなったあたりからまた曲線が横ばいになるってことなんじゃないのかなあ。 どうなんでしょう。

また、どなたかの質問に答える形で言っていましたが、各人のモニタは実は3つ目もあるそうで、3つ目のモニタは相手には見えないそうです。なので仕事中に Youtube 見たりしてサボる場合は3つ目のモニタで見てますね、などと冗談交じりに答えていました。うーむ、やはりそういう感じなのか。でも、冗談じゃ済まされないと思いましたね。重要ポイントだと思います。正直、なーーんだ、やっぱりそうなのかーと思いました。

いやあ、こんなに手厚く扱ってもらえるなんて、すごいです。さすが大会社。嫉妬します。いや、手法を真似しようとは正直思っていないんだけど、その待遇自体には嫉妬します。いいなあ。



次にアニメーションテンプレートというものですが・・・。


アニメーションを人に教えるのは難しい。
そこでアニメの原画動画のシステムに注目。
動画の人は、上手い原画に触れることによって、絵を覚える。
つまり、良いアニメーションをトレースすることによって、アニメーションは上達する。
だから、社内に蓄積されたデキの良いアニメーションデータを新人に渡し、それをトレースさせてアニメーションの腕を鍛える。


という主旨のお話だったと思います。

作業画面を見せてもらいましたが、ベテランのアニメータが作った XSI のシーンデータを開き、3D的にトレースしていくんですね。 フレームごとにポーズをマッチさせていくわけです。 元データをテンプレート(雛形)にするからアニメーションテンプレートという名前にしたんでしょうね。でも雛形というよりは、完全コピーを目指しているようですが。


最初はポーズだけ真似してタイミングは無視する、という意味のことを言っていたと思います。あるフレームのポーズだけを再現するという意味なんでしょうかね? よくわかりませんでした。 → 次にキーフレームにのみ注目。キーフレームになっているコマは自分で見つけるんでしょうかね? でも普通に XSI のタイムラインに表示されちゃうんで、すぐわかっちゃいますよね。どうなんでしょう。 → 次に中割りというか、おそらくFカーブに注目。

こんな感じで進めていくそうです。 分解して考えることで何がおかしいのかが見えやすくなる、だそうです。

実写映像をロトスコープしてなぞるとかは、情報量が多すぎてダメだそうです。上手い人がスタイライズして作ったアニメーションをコピーすることに意義がある、という意味のことを言っていたと思います。また、3Dデータを使って3D的に(XY ではなく XYZ で)コピーすることで、2Dロトスコープとは違い、見ているようで見てなかった部分にも気付くようになるんだそうです。


うーむ。


まずはコピーすることそのものの是非ですが、極端な話、何も考えずにただひたすら1コマずつマッチさせて行けば、その「上手いアニメーション」が再現できちゃうわけですよね。 もちろんそんなことをせず、ちゃんと研究して理解しながら進めて行けというルールにはなっているんでしょうが、できあがったアニメーションが、ただ何も考えずコピーしたものなのか、ちゃんと「わかった」上でできたものなのか、どうやって判別するのでしょう?

また、ロトスコープは情報量が多すぎて云々ということでしたが、それって、劣化コピーにならないのか、と思ってしまいます。例えばデッサンする時に、誰かのデッサンをなぞってコピーしたりするもんでしょうかね? 俺は絵的な専門教育を受けてないのでよく知らないんですが、やっぱり人間モデルなり静物なり彫刻なりを、ナマで見てデッサンするものじゃないですかね? 

不要な要素を削ったり、ある要素を誇張したりして、見たまんまではなくある方向の表現にする=つまりスタイライズするってのは、ナマで見てそこで起こっていることを分析できて初めてわかることなんじゃないかと。 すでにスタイライズされたものを忠実にコピーしても、何が削られて何が誇張されたのかが理解できないのではないかと。 そんな疑問が出てきました。

よく小学生の女の子とかが、少女漫画のキャラの似顔絵を描いたりするじゃないですか。目の中はキラキラのお星様だらけです。大人が見れば、あるいは絵という観点から見ればちっともリアルでもないし、ある方向でスタイライズされたわけでもない、ただのヘタクソな絵です(それが悪いというわけではないのですが)。 なぜそうなるのかと考えると、小学生の女の子は人間の目を観察してその絵を描いているのではなく、少女漫画というある方向で既にスタイライズされたもの、そして漫画という特に極端にスタイライズされたものを見て描いているからだと思うんですね。これが劣化コピーそのものだと思うんです。 目の中のキラキラは、本来眼球に写りこむ光源やら周囲の環境やらなわけです。そういう観察や理解なしで、ただキラキラを真似して描くから劣化コピーになると思うんです。 アニメなんかでも同じことが言えて、例えば頭髪に現れる天使の輪なんかは髪の毛のような細くて密集しているものに現れる異方性反射なわけですが、そういったしくみや現象の観察・理解なしに記号として描かれてしまい、なんだかヘンだねーヘタだねーという天使の輪も多く見かける気がするんです。今時の作画マンはおそらく最初にリアルありきではなく、最初から「アニメの絵」を描こうとしてやっていると思われるので、最初は仕方ないにせよ、キャリアのどこかの時点で記号化された表現と現実の現象とのリンクを意識することができない限り、説得力のある絵を描けるようになって行かないと思うんです。 ああこれ、記号的に描いてるだけだよねえ、って表現はいっぱい見ます。

という意味で、ロトスコープじゃダメなんです、ベテランが作ったスタイライズ済みの上手いアニメーションを模倣する必要があるんです、という話は???な気がしました。


また、実際にこのアニメーションテンプレートを実施したある新人さんの作品を見せて頂いたのですがね。 最初はアニメーションテンプレートを実施する前のモーションです。失礼ながら、話にならないくらいダメダメなモーションでした。 次に、アニメーションテンプレート実施中のモーションです。実際に XSI のシーンがあり、巨大クモのようなクリーチャーが暴れて人間2人が逃げ惑うというような複雑なモーションでしたが、確かに元のオブジェクトにぴったり重なるようにして新しいモーションが付けられています。シーン上で2つのクリーチャーが3D的に重なっている状態です。 ただしこれは上に書いたように、ちゃんとわかってできたのか、ただポーズをマッチさせていった結果なのかはわかりません。 そして一通りトレーニングを終えたあとのアニメーションとして、キャラクタがハンマーを振り下ろすというモーションをループで見せてくれました。ちなみに講師のお方も言及していましたが、大塚康夫さんの話などに出てくる、あのハンマーアニメーションですね。このDVDに出てきます。

で、成果であるこのハンマーアニメーションは、確かにパッと見は良くできた動きではありましたが、動き全体が見えにくいアングルでレンダリングされたものだったので、隅々まで良い動きなのかどうかまではわかりませんでした。そして非常に短い一瞬のモーションなので、これをもってこの人の実力を判断するのも無理があるなと思いました。その後に肝心の、最初に作ったダメダメモーションを研修後に再度作ったものを見せてくれるのかと思いきや、それは出てきませんでした。また、クモクリーチャーのモーションをテンプレート無しで作ったバージョンも見せてくれるかと思いきや、出てきませんでした。 うーむこれじゃあこの教育方法の成果のデモとしては弱いなあ、と思わざるを得ませんでした。

どなたかが質問で、上に書いたような「機械的になぞっていくだけで上手いアニメーションになってしまわないか?」という意味の質問をしていたのですが、回答は 「最初はこんなくらいがちょうどいいんです」 とのことでした。質問に対する答えが Yes なのか No なのかはちょっとわかりませんでした。 たしかに、ど素人が最初の第1歩を踏み出す方法としては良いのではないかなと思いましたけどね。でも、成長曲線停滞の打破という意味では、ほんとにそんなに成果あったの~ と疑問に思えちゃいましたね。でも成果があったと仰っているわけだから、あったのでしょう。すげえよほんと。

上手い人のアニメーションを真似たり、ロトスコープもしくは参考動画をなぞるようにアニメーションを付けるというのは、これまたやる気のある人なら勝手にやってることだと思います。 俺も、どうにも不慣れなモーションを作らねばならない時に、ビデオで自分を撮影してロトスコープしたこともあります。色々気づくので俺には良い方法です。
そう言えば大昔、某国民的ロボットが太極拳を舞うなどというヘンな仕事をした時は、ジャパンアクションクラブの人に演技をしてもらい、前と横から2カメでビデオを撮影し、それをロトスコープしてモーションを付けて行くという恵まれた仕事でしたね。これも色々発見があり、その後の役に立ちました。 昔のディズニーなんかでも、まさに役者の芝居を撮影してロトスコープするという手法もとっていましたね。そもそもロトスコープってこの時に生まれたコトバじゃなかったっけ? 違うかも。どうだったかな。 また、その筋では有名な某アニメ監督(作画出身)も、昔テレビに紙を押し当ててマジンガーZの絵を必死にトレースして動かしていたとか言ってました(当時ビデオ持ってたのかな?)

ともかく、自主的なトレーニングという意味でも、本番の仕事の手法としてでも、何かをテンプレートにしてなぞるという方法は昔から採られてきたわけであって、それ自体は目新しいわけではないと思います。 ただ、セガさんの手法は、自社で豊富に持っているアニメーションのライブラリを使えるという利点、スタイライズ済みのモーションをコピーすること、そして「アニメーションテンプレート」というタイトルを付けていわばオフィシャルな教育カリキュラムとして取り入れていること、などがポイントになるんでしょうかね。


全体の印象としては、悪い言い方をすればあまりにも過保護ではないか、と。これに尽きる。良い言い方をすれば、やる気のある人が勝手にやっていることを制度として宣言し全体に徹底させることによって、より下位にいる者を上に引き上げてやるというやり方を採っていると言えるではないでしょうかね。


なんだかずいぶん批判的に書いてるような気がしますが、必ずしもそんなことはなく、色々考えさせられてとても良いセッションでした。 朝イチから3時間、眠くならなかったし。 ふーん、へーーってただ聴いているだけのセッションより、こうして色々考えるセッションの方が得るものが多いのです。実に面白かった。 また、セガさんとしてもまだ開発途中の教育方法だと断っていたので、決して完成された方法としてプレゼンテーションしたわけではないです。俺の解釈がおかしい部分もあるかもしれません(メモが追いつかないんだもん)。

いやーそれにしても朝から腹いっぱいになりました。疲れるなあ。ほんとは、朝はもうちょいあっさりめのセッション受けたかったなあというのが本音なんですがね。




午後からは展示などをチラチラ見たあと、展示会場内で行われた Lucasfilm Animation Singapore のテクニカルトークを聴きました。
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必死で取ったメモから抜粋。

なぜシンガポールにスタジオ作ったのか?
・アジアの中心地だから魅力的
・アメリカ以外で才能を育てる拠点がほしかった
・シンガポールはインフラの整備が進んでいる
・シンガポールは知的財産権の保護に力を入れている
・英語の国である
・アジア全体の拠点になる
・税金安い
・(アメリカと違って)ビザがとてもオープンである(出入国しやすい)

だそうですよ。
2008年には 280人だったスタッフが、2009年には 350人だそうです。世界 40ヵ国から集まっており、70% がアジア人だそうです。 350人だって。すげえ。これって、プロジェクトの最盛期に一時的にその数になるのではなくて、常時雇用されている数のことですよね? だとすると、350 って多すぎですよ。 ちなみにそのほとんどがアーティストだと言っていました。プログラマなり TD なりではなく、直接絵作りをするアーティストが大半だ、とうい意味なんだと思います。

アメリカ本国のチームと OC-3 による高速回線でつながっていて、全く同じ環境で仕事ができるとのことでした。ソフトウェアや各種データライブラリなどのアセットが完全に共有されているそうで。 なので、アメリカからシンガポールに異動になっても即日同じ環境で仕事が始められると言っていました。

それと、Lucasfilm Animation Singapore には Animation, VFX, Game の3部門があるらしいのですが、ここでもやはりツールやアセットを共有しているそうです。アニメーションも VFX もゲームも全部同じツールを使い、アセットも使えるものは使いまわす。例えばゲーム用に作った群集アニメーションをTVシリーズにも使ったりしたそうです。
なるほど、色んな種類の仕事をやっている大スタジオならではの効率化ですねえ。なんだか自分の環境とは規模が違いすぎて、参考になるんだかならないんだか、さっぱり分かりません。

また、cross disciplinemulti-discipline というコトバを何回か使っていましたが、要は専門分野をまたいで仕事をするという意味のことのようです。技術やアセットだけでなく、人も全部署で共有しているだそうですよ。つまり、ゲーム部門の人が、プロジェクトの必要性によってはアニメーション部門に行って仕事したりするそうです。Talent Resource というコトバを使っていましたが、つまり能力資源を最大限に活用するということですね。能力とは人そのもののことだから、才能のある人は一部門でだけやってもらうのではなく、必要な部門に臨機応変に回すということだと思います。そして、全部署でツールもアセットも共有しているもんだから、他の部署に渡ってもさほど苦はないという意味のことを言っていました。 へえ、ほんとにすごいね。 「便利屋」みたいな人も出てきそうだし、人気者・ひっぱりだこな人も出てきそうですね。 各国からわざわざシンガポールに渡って Lucasfilm でCGやろうってなくらいの人たちだから、部署の移動なんて屁でもないでしょうしね。

それと、ジェダイ・マスターズ・プログラムという研修制度の説明をしてました。そういや前にも書いたことあるな。  これは Lucasfilm Animation Singapore に入るためのテストですね。6ヶ月間の有給トレーニングだそうです。各クラス12人とか言っていたかな。ルーカスフィルムの best artist な人たちが講師で、部署ごとにすごく特化されたトレーニングをするそうです。アニメーションに特化とか、レンダリングに特化とかそういう意味だと思います。 そして6ヵ月後に、選ばれた者だけが晴れて Lucasfilm Animation Singapore に入れるそうです。

日本人はいるんでしょうかね? 誰か入ってみて下さいよ。特にアニメーションは、日本人の方が強いんじゃないですかね。けけけけ(また言ってるよ)。


ジェダイマスターズプログラムに入学するには、strong demoreel が必要だと言っていました。入学してから実力を付けるというより、最初からできる人だけが入学し、入学後は特定の分野での強化をはかるという、いわば大学の本来の姿に近い感じでしょうかね。 何のソフトウェアを使っていたかは重要ではないそうです。また、プロとしての経験がなくても、学校あがりの人でも大丈夫だそうです。 ちなみにメインツールは Maya + メンタル霊のスタンドアロンだそうです。ここでもやはり Maya ですねえ。

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質疑応答の時に、質問した人にはルーカスフィルムトランプをあげるというので、景品目当てで俺も質問しましたよ。トランプもらうことが目的なので質問の内容はどうでもよく、パッと思いついたので、「あのう、俺たち日本人はあんまり英語が得意じゃないんですけどぉ、ジェダイマスターズプログラムに入る時点で英語を話せてないとやっぱダメすかね?」って聞いたら、 Ahhhhh, yes.  だそうです。テクニカルなことのみならず全てのコミュニケーションは英語なので、英語能力は最低条件ということのようです。まあそりゃそうですわね。まるで話せなかったら面接すら通らないですわね。


と、当然の答えをありがたく聞いて、ゲットしたトランプがこれです。
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過去の Lucasfilm Animation Singapore の作品が載っているトランプですが、トランプ用に作ったのではなく、明らかに作品の中の1コマを印刷しているだけです。アスペクトが 16:9 っぽいし、トランプでヨコ使いの絵なんて見たことないし。 いくらルーカスフィルムでも、こんなもんには予算をかけないということですかね。

本当はもうちょっと濃い内容の話だったはずだけど、英語だったし録音や録画もできないので、走り書きのメモからマトモに拾い出せるのはこの程度だけでした。一応通訳のおじさんが付いていたんだけど、いったいどういう経緯でこのおじさんが通訳をやることになったのか、CGのシの字も知らない、というかデジタルなことなんてさっぱりわかりませんという感じおじさんだったので、もうヴォロヴォロでした。本人もちゃんと通訳することをほとんど諦めていたかのような。質疑応答ではもう翻訳やめちゃってるし。 でもまあ、CG関係の通訳なんていつも似たようなもんです。




その後は、ジオメトリ系の論文セッションにに・・・。 少し後悔することになるんだが。

もう調べるのも書くのめんどくさいので、技術の詳細は省略。概略のみ。英語のセッションでは特にそうですが、SIGGRAPH でセッションに参加しても、せいぜいここに書いた概略くらいしかわからないんです。詳細は帰ってから WEB やフルカンファレンス DVD で調べるのが常套手段です。っていっても、数式とか出てきてもうわかんない、ってパターンの方が多いんですが。


最初は、Structured Annotations for 2D-to-3D Modeling という、2Dの絵を3Dに起こすための新しい手法の提案でした。

P11


例えば人間の絵を描くときに、顔ならマル描いて目の高さに横ライン、正中線の縦ラインとか描きますよね。体全体もマルや楕円で大まかに描き、それをアタリにしてちゃんとした線を描いていくわけですが、このマルとかで表現された絵のように、2Dの下絵に対してすげー大雑把な3Dプリミティブ(シリンダとか)を描いていって、この部分とこの部分は左右対称なんだよーという情報をソフトウェアに知らせてやることによって正しい立体に起こすというものでした。

Annotation という概念が重要で、直訳すれば「注釈」のような意味ですが、要は「こことここは対称です。 こことここはスケールが同一です」などと、プリミティブごとの対応を説明する情報なわけですね。 

P12

2Dの絵では、例えばパースが付いているため、に同じ長さの2本の腕でも奥にある方が小さく見えるわけですよね。正面図ならいいのですが、ポーズが付いて描かれている絵ではこういうことが起こります。 この技術では、「この2本の腕は対称で、絵では大きさ違うように描かれてますが、本来同じ大きさなんですよー」と Annotation を付けてやることによって、正しく立体化できるということのようです。Tポーズの三面図とかではなく、ポージング済みで自由に描かれた絵1枚からでも立体にできるという、イメージベースドモデラの一種ということになりますかね。 ビデオの後半にありますが、初めて使った人が、20分とか30分で、まずまず元を表している立体を作れていますね。

問題はどこまでの精度が出せるかですね。プロダクションで実際に使われているわけではないので、まだ簡単な作例しかありません。仕事で実用に耐えるかどうかはまったくわかりません。独自ソフトウェアにするか、XSI のような総合ソフトウェアの機能の一部になって出てきてほしいものです。 ZB とかスカルプトソフトウェアで使うベースにならないですかね? ポージング済みの設定画をこのツールでなぞり、ラフな形状を ZB に渡してディテール作るとかってできそうな気もするんですが、どうでしょう。 そうなるとリトポロジーの性能が肝になりそうですけどね。

ちなみに、六角大王の「3Dマンガ機能」でしたっけ、これと考え方は基本的に同じですよね。六角大王の場合は、これとこれは対称なんですよーという、対称 Annotation しか持っていないわけですが、今回の技術では色んな種類の Annotation を持っているので、より自由に作れるということになるんじゃないでしょうかね。



次は Analytic Drawing of 3D Scaffolds という、これまた2Dの絵から3Dに起こすような技術ですね。3D空間上にパースのガイドラインを設定することによって、その後に描く線がそのパース上にコンストレインされて、まっすぐならちゃんとまっすぐ、カーブしているなら美しく弧のカーブが描けるという、そういう技術のように見えました。



二点透視の絵を下絵として用意し、それをなぞるようにフリーハンドで描いていけばキッチリとした立体になる、ということになりませんかね。どうでしょう。 テクニカルイラストとかに使えそう。 建物なんかをパパッとモデリングするのにも使えそうな気がします。 ノートルダム寺院みたいな、フライングバットレスとかが付いてるような複雑な建物とかを、1枚の写真のみを元にモデリングできたりしたら、かなり使える技術だと思います。

P2

先ほどの Structured Annotations for 2D-to-3D Modeling なんかは明らかにキャラクタを作ることを意識している技術ですが、こちらはもっとカタいものというか、工業デザイン的なものを想定しているように見えますね。 これも実用化されないかなあ。



次は、ええと、ダメだ、もう疲れちゃってメモがとてもいい加減になっている。ちゃんと咀嚼できていません。もったいない。

ともかく、DiagSplit: parallel, crack-free, adaptive tessellation for micropolygon rendering というタイトルの、ディスプレイスメントのアルゴリズムの話です。ええと。これまでのディスプレイスメントマッピングでは、テッセレーションレベルの境界にクラック(すき間・割れ目)ができる。 つまりテッセレーションの密度が変化している領域をまたくようなディスプレイスメントは苦手である。でも、この技術ではテッセレーションの方法を工夫してあるのでクラック無しにレンダリングができる。しかも速い。Direct3D と同じくらい速く、Renderman などの REYES 系のレンダラと同じくらい高品位のディスプレイスメントができますよーという話に聞こえました。 うむ、この程度。

P3_2


動画が見つからないな。とりあえずパッと出てきたリンク。
http://portal.acm.org/citation.cfm?id=1661412.1618496&coll=ACM&dl=ACM&type=series&idx=SERIES382&part=series&WantType=Proceedings&title=SIGGRAPH



もうひとつ、Approximating Subdivision Surfaces with Gregory Patches for Hardware Tessellation などという、復活の呪文のようなタイトルの論文発表を聴いたはずですが、ダメだ、もう完全に意識が飛んでいたようです。メモすらありません。玉砕。





以上で論文セッションは終わりました。そして、上で少し後悔したと書きましたが・・・・。

というのは、論文を聞きに行ったのはいいんだけど、前半はともかく後半は難しいやら眠いやらでロクに身になってないわけですよ。その間、一緒に SIGGRAPH に参加した同僚は、富野由悠季さんの 「Ring of Gundam : No Hints for Creation in Your Manuals」(リング・オブ・ガンダム:マニュアルに創作のヒントはない)に参加してたんですよね。そして終わってから落ち合うと、彼はそりゃもうニッコニコしていて、「いやあ、凄かった! 面白かった!」 と言うわけですよ。

なにっ、そんなに面白かったのか? いや、富野由悠季さんの本も読んだし、各地での話からかなりぶっ飛んだ人だということは知っているつもりだぞ。富野節とでも言うべきアレが出てきたくらいのことは想像できるぞ。

しかしね、めったにない SIGGRAPH のチャンスなんだから、複数の人が同じものを見るよりも、手分けして色々なものを見てきて、後で報告し合うことによって情報を共有する方が有意義じゃないですか。そんな風に真面目に考えて、よし富野はお前が討って来い、俺は論文発表に突撃してくる、さらば戦友よ次はヴァルハラで会おう、と別れたんですよね。

そしたら見事に俺は玉砕し、富野講演は死ぬほど面白かったという。一生の不覚。 思えば富野さんがCG関係のカンファレンスに出て持論を喋るなんて、めったにない機会ですよねえ。論文は後で PDF 読むこともできるけど、富野節は DVD になんてならないでしょうからねえ。

後から WEB で調べてみたら、ああ、本当に面白かったみたいだよう。・゚・(ノД`)・゚・。
http://www.4gamer.net/games/103/G010304/20091221034/

これ、オフィシャルには録画してたんじゃないんですかね? DVD 出してくれませんかね ACM SIGGRAPH さん?



こんな感じで3日目は終わり、ぐったり疲れて、富野見逃しに地団太を踏んで、でもまだ体にムチを打って、クレッセントさんのパーティに参加してきました。 社長、いつも呼んでくれてありがとうございます。

SIGGRAPH 会場近くのイタリア料理屋?をたぶん貸切りで、立食パーティのような感じでしたかね。タダで呑み放題食い放題です。わーい。 それはもう、いっぱいビール呑みましたよ。 他の会社の人とも交流ができて、実に楽しかったです。TVのニュースCGを作っているというお方の話が面白かったですね。納期が発注から1時間後や2時間後というのもザラだそうで、それにリアルタイムの VR なこともやるので、なんか俺の現場なんかと比べて緊張感が違うように聞こえました。大変だよそれは。俺にはできないなあ。すごいよ。

そういや 2008年の SIGGRAPH に参加した時に知り合った、やはりTVのニュースとかのリアルタイムCGをやっている人の話も面白かったんですよね。あらかじめ映像や素材を作るのはもちろんだけど、生放送でそのオペレーションをやるのも自分たちだそうで。 アナウンサーの喋りにタイミング合わせてスイッチ押したりするそうです。 新人はスイッチを押すのを待っている間に手がブルブル震えるそうで、「おい、お前、まだだぞ! その震えてる手でスイッチ押しちまうなよ!」 って感じだそうです。 いやあ、そりゃ緊張するよ。 俺はダメだ絶対。


その他にも何人かのお方とお話させてもらい、22時過ぎまでさんざん呑んで酔っ払っての帰り道、みなとみらいの観覧車をまたしてもバシャバシャと写真撮ってました。 完全に田舎者のおのぼりさんです。 前日の夜も同じように観覧車を撮ってたんですよね。イルミネーションが綺麗で、しかも真下から見上げることができたので、わーこのトラスな骨組みカッコいいー、などとつぶやきながらバシバシ写真を撮っていたら、嘔吐デスクのあの人に発見されてしまいました。 「なんでこんなとこで写真撮ってんですか」ってあなた、だってカッコいいじゃないですかこの観覧車。 

Img_0040

それにしても連日寒い夜でした。シャッター押す手が震えて、ISO1600 でも手ブレしまくりでした。



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