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2009年12月18日 (金)

SA1。

先日から SIGGRAPH ASIA 2009 が行われてるわけですがね。

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初日は機器展示もないし、まだ軽くジャブという感じでしたかね。でも個人的にはなかなか濃い1日を過ごしまして。


朝はセガさんのゲーム作成講座みたいなのを聴いてきましたよ。 初心者向けということになっていたので、もしかして俺にでもわかるかなーなんて思って行ってみたら玉砕orz
いや、日本語だし、話は面白かったし、何を言っているのかはわかりますよ。ただ、俺のようなゲーム開発はおろかマトモなプログラミングなどやったこともないという人向けではなく、明らかにゲーム開発に十分関わった人向けの話でしたね。行列変換は内積もコサインとクラスにグローバルでゴルァ。俺にはそんな感じでした。

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最低限の仕様のゲームをまず作り、「こいつクソゲーですね だってこうやったら永久に続きますもんね 上手いもヘタもないですね」と問題を指摘し、じゃあこういうゲーム性を持たせましょうと改良し、「良くなりましたね。でもこれじゃ、操作を厳密にすることが命になってしまってつまんないですね」とか言ってまた改良し、「やっとゲームらしくなってきたけど、グラフィックがショボいので立体にしましょう」とか言って3D化し、「絵が淋しいしわかりにくいのでシャドウを落としましょう」と言ってシャドウマップによる影付けを盛り込む。こんな感じで3時間半かけてゲームを改良していく講座でした。その場でコードを書くのではなく、料理番組のようにすでに作ってきてあるものを出して、コードの解説は全然しなくて考え方の解説をするというものでした。

この考え方の解説ってのが面白いわけでしてね。へえ、なるほど、そういう過程で考えるんですか、ゲーム屋さんもCG屋とあんまり変わらないね、などと思いながら楽しく聞いてました。目からウロコが落ちるような画期的な話ではなく、ごく普通で堅実な話ではあるんですが、経験者ならではの説得力と重みがあったと俺は思いました。こっちが素人なのでちゃんと見れてないかもしれないのはありますけどね。まあなんにせよ、プロフェッショナルの話ってのは面白いもんです。

講師のお方は、誰かが作ったライブラリをただ使うんじゃなく一回でも自分でそこを作ってみないとダメですよーという意味のことをしきりに言っていました。CG屋で言うなら、絵ができれば何でもいいとアーティスト然としてただツールを使うのではなく、その裏にあるロジックをちゃんと理解してないとダメよーという意味になるでしょう。まったくその通りであり、耳の痛い話でありました。シャドウマップの解説をしてたけど、その話を聞いてシャドウマップの仕組みが前よりはよくわかったので、こういうのがロジックを理解する意義だなあと思いました。というのは、ベタな例えで言うと、シャドウマップでジャギるとか問題が出た時に、なぜその問題が出るのかさえ理解していればどのパラメータをいじればいいのかすぐわかるので、より早く確実に問題解決ができる、ってことです。あるいはこれは構造上本質的に避けられない問題だ、ってのがわかっていれば無駄なことをせずにさっさと次の方法に進めるとかね。


しかしこの講師のお方、こう言っては大変大変失礼ですが、まるでこのブログのような、不真面目で低俗な表現方法を旨としているらしく、実に不謹慎で楽しい講座でした。あー面白かった。



午後は UP ですね。ピクサーの人が出てきてたっぷりカールじいさんの話。このセッションを見るつもりだったので前日に UP を劇場で観てきましてね。予習していたので話が割と分かったので良かったですよ。最後の方だけ眠くて眠くてたまらんかったですけどね。せっかくの貴重な機会なのにすいません。

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これは夏の SIGGRAPH でも言っていたんだけど、キャラのデザインは「四角」と「丸」を基本のコンセプトにして、四角い=静的・悲観的・保守的  丸い=動的・楽観的・革新的 みたいなイメージで作品全体を作ったそうですよ。 じいさんの外見は四角いシェイプでできていますが、性格から何からそのコンセプトを反映させてあるわけですね。対するラッセル少年は丸でできたキャラです。 キャラだけでなく、ショットの構図やら何やらも、全てこのコンセプトで貫いたそうです。

キャラはすべて、手描きのデザインからリアル立体の模型を起こして、そこで詰めてから3D化しているそうです。「紙やクレイでダメなものはCGにしても絶対ダメなものになる」という意味のことを言っていました。ふうん。


カメラワークも徹底して統一したコンセプトのもとにやっているという意味のことを言っていたと思います。イマジナリラインの方向、レンズの選び方、背景要素から生まれる線の形など。

例えばカールじいさんがエリーばあさんに先立たれて暗く落ち込むくだりでは、特別な意味のある数ショットをのぞいて全て俯瞰でありレンズも標準 50mm 固定でありカメラの高さも一定であり・・・という感じで統一したそうで。孤立感を強調するために狭い範囲に被写体を何かで挟むようにレイアウトしたり(スクイーズと言うらしい)、Dutch カメラって言っていたかな、緊張感を生むためにカメラをロールさせたり、Frame in Frame って言ってたっけ、キャラをワクで囲ったような構図にしたり。 この辺は小津安二郎や黒澤明のカメラワークを大いに参考にしているそうで、そのリファレンスもいっぱい見せてました。                                                                                                                                                       

イマジナリの方向、あるいはモノが画面上どっちに向かっているのかという映画全体を通しての「方向」の話ですが、ショットの演出意図としていわば能動的でダイナミックで Good な場合は、全てカミテ向きにしているそうです。逆の時はシモテ向き。たしかに冒険へ向かうじいさんの家はカミテに向かっている。それ以外でも前へ前へとポジティブに行く時はカミテ向きになってます。 富野由悠季氏が「映像の原則」で人間の心臓の位置を根拠にこれに似た話をしていたが、通じるものがあるんだろうか。まあ富野氏の論説は俺にはトンデモ理論に聞こえなくもないのだが。

悪人が出てくる所は背景の地形やカゲの形で、画面上三角形になるように配置したそうです。


まだ観ていない人はそういう所も観ると面白いかもしれないですね。カメラと被写体の関係、つまり画面のレイアウトですね、そこから来るまとまり感・統一感がほんとにピクサーの人が言っているほど効果が出ているのか、そこまでやったレイアウトが本当に演出意図として観る人に(無意識にでもいいから)伝わっているのか、是非批判的な目で見て評価して欲しいですねえ。


ライティングも、全ては演出意図のためにやりましたーっていうプレゼンだったように思います。Selective Details って言ってましたが、見せたい要素だけを見せるためにウソなライティングをいっぱいしているそうです。Theatrical Simplicity ってコトバを使っていたけど、そのまんま訳せば「劇場的なシンプルさ」くらいでしょうか、いわば舞台で役者の所だけにスポットライトが当たっているように、見せたいところだけなぜか明るくそれ以外は暗く落ちているようなライティングです。そういうライティングを随所でやってるそうです。


背景はディテールを省いてすごくシンプルにしたそうです。確かにカメラ遠い所はディテールが少なく、近いところだけ描き込まれているというアニメの背景美術のような状態になってます。Mary Blair さんという、昔のディズニーの背景美術を担当していた人なのかな、その人の絵をインスピレーションのソースにしたそうで、余計なところは作り込まないことによって観る人の視線を見せたいところに誘導させているんですって。 ジャングルのシーンも多いので、そもそもジャングルをマトモに作り込んでいたら死ぬから、という理由もあるそうです。


色もシンボルカラーのようなものを設定して統一したそうで、エリーはピンクであり、意味としてエリーに関係がある、あるいは関係させたい部分は必ずピンクっぽい画面にしているそうです。


全体的に、前作 Wall-E のようなリアルに見えるものではなくスタイライズされた世界になっているわけで、リアルから一歩引いてスタイライズするのがすごく難しかった、と言っていましたね。あと、宮崎駿の名前を出して、究極的には目指すところは同じだと言っていました。宮崎アニメは水だとか火だとか自然現象までも完全にスタイライズしている、つまり自然現象も含めた描画対象全てに対して、リアルではなく見せたいスタイルで徹底的に描写している、それをやりたいんだ、という意味のことを言っていました。





とまあ、ここに書ききれないくらい長々と、いろんなコンセプトの話をしていました。技術の話はほとんど無しで、ほんと演出的な話ばかりでしたね。

でもねえ、正直に言いますが、ピクサーが今回色んな見出しをつけて語ったことの全ては、できる人だったら自然に、無意識に、多くを語らず、黙々とやっていることだと思ったんですよね。そういうものに対して Selective Details だとか Directing Eyes with Line だとか、手法ひとつひとつにタイトルを付けているわけですね。多くの人が関わる大規模なプロジェクトだから、できる人が「なんとなく」やっている手法をちゃんと明文化して全スタッフに浸透させようという考えはごもっともです。100%賛成です。でも、ここまでひとつひとつの手法にタイトルを付けられると、それはもう、タイトル先行なんではないかと思えてきたりもするわけですよ。本当に必要に駆られて生み出された手法なのかなあ、と疑いたくなります。見せたいもの以外を目立たなくするなんて、タイトルなんて付けなくても普通にみんなやることじゃないですか。でもピクサーのような「権威」のあるスタジオが、そんな当たり前のことにもっともらしいタイトルを付けて「このコンセプトでやっているんです」とか言うもんだから、正直違和感あるんですね。ま、権威があるからタイトル付けられるわけですよね。権威のない俺が、たとえ普段から同じことを意識して実践していたとしても、そんなタイトルを付けて誰かに語ったら笑われちゃいますからね。

また、ピクサーのような権威のあるスタジオがその後光をバックにこういう情報を発信し続けると、実際の絵で表せていないにも関わらず、あるいはその意味をちゃんと理解してないためにその手法を適用する場面を間違えているにも関わらず、これはあの手法を使って作ったんだだからこれでいいんだなどと言い張るトンデモ自主制作作品演出家のような人が多く出て来やすくなります。そんな小さな弊害もあるなんて、まあピクサーの人は考えもしないでしょうがね。

なんだかひがみっぽくなってますね。ええ、ひがんでますとも。ねたんでますとも。そりゃそうですよ。俺だってそっち側に行けるなら行きたいですよ。でもいいんです。俺は東京の片隅で、早く引退できる日を夢見ながら、勝手なことを吠えながら、細々とやるんです。ひがみとねたみは最大限の敬意です。ほんとだってば。


ところで肝心の映画のお話は、いやあ、俺はダメだあれは。今までのピクサー映画で、一番不完全燃焼じゃないかなあ。

じいさんがラッセル少年に情を移す意味がわからない。
少年はじいさんのために、何かしたか?
エリーへの想いだけで旅を続けるじいさんの心を動かす行為を、ひとつでもしたか?
犬がじいさんを好きな理由もわからない。
従ってじいさんが犬に情を移す意味もわからない。
鳥を助けようと思うその理由もわからない。

エリーとの愛の生活、泣けました。
エリーへの想いの深さは、それはもう心を打つものでした。
自分の体験や境遇に重ね合わせたりしながら、心を打たれた人は多かったのではないでしょうか。
どうみても、じいさんのエリーへの想いを描写して泣かせようとしている演出ですわね。
そこはまんまとやられましたよ俺は。

でも、そこであれだけ引っ張ったのに、最後はエリーのことがもうどうでもよくなってないか?
エリーへの想いがあったから、全てを捨てた旅に出たんではなかったのか?
二人で貯めたお金の瓶も、あんなに簡単に投げ捨てて割っちゃっていいの?
嵐の中必死で守ったエリーの写真は、もういいの?
そこまでして少年や犬や鳥と関わりたい理由は、本当に描写されていたか?

弱い。弱いよ描写が。動機の描写が弱いよ。
脳内補完でなんとかギリギリ補えるレベルだ。
でも映像作品が、脳内補完を期待してはいけないですよね。
説明しすぎるのはカッコ悪いという意味のことを言うトンデモ演出家が多くいますが、
伝わらないのが一番カッコ悪いですよ。
ディテールはともかく、動機だけははっきり描写しないと。
これでもかというくらいはっきり描写しないと。

と、映画館を出た後大いに悪態をついたのでした。
絵ヅラはいつものようにスヴァらしかったですけどね。
ステレオ3Dに関しては、同僚が言うには「手前にではなく、奥に広がるステレオ3D」とのことでしたが、まさにそんな感じでした。邪魔じゃなくていいですね。
でも眼鏡はやっぱり邪魔だ。
それに、やっぱり色がね。色が犠牲になっている気がする。
ちゃんとステレオ用のオーサリングの時に色も考慮して調整してるんだよね?
でも眼鏡を取って見てみた時の色が一番鮮やかで、ドキッとするくらい綺麗なんですよね。
眼鏡かけると、彩度も輝度も落ちちゃって。
いつまで続くんでしょうステレオ3Dは。
良い方向に進化してくれるといいんだが。
でも何が良い方向なのか、俺はまだよくわかりません。



夜はファストフォワードセッションというやつに参加しましてね。

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ファストフォワード、つまり早送りですね。 論文発表をする人たちが、論文の主旨をまとめた短いビデオを作り、壇上で早送りのように次々に「こんな研究しましたよー 発表見に来てねー」と宣伝するわけですね。 SIGGRAPH の名物セッションでとても面白いと聞いていたのですが、過去には参加したことがなかったんですね。 初めて見てみたら、いやあ、これがおもしれえ。

真面目にやる人もいるんですが、多くの人はふざけてやるわけですね。説明ビデオがなかなか笑える作りになっていて、壇上でのプレゼンターも面白いこと言ったり、ビデオの音楽に合わせてラップのライブを始める人もいたりしてね。なかなか見応えありました。 日本人が出てこなかったのは不思議ですが。日本人の論文もこの SIGGRAPH に入ってると思ってたけどなあ。

ともかく、初日からなかなか濃い SIGGRAPH でした。
2日目は朝からプロダクションのセッション(OLM や DD や SPI などそうそうたるスタジオばかり)、午後はたっぷり4時間ワークショップに参加し(体を動かすワークショップで実に楽しかったが疲れた)、夜はエレクトロニックシアターと、もうぐったりでありました。3日目も朝イチからなんだかんだあります。
頼むから会期延ばしてもうちょっとゆるいスケジュールにしてくれ。



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