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2009年8月15日 (土)

ほたらけ。

ホッタラケの島の試写会に行く幸運に恵まれましてね。


いやあ、すげえ密度。絵の密度はすごいです。キャラクタ、背景、プロップ類、どれも高密度で、作った方々はさぞかし大変だったでしょう。マジで敬意を表します。


お話は、実はあんまり面白くなかったというのが正直なところ。 もうちょっと胸が痛くなるような、切なくなるような感じとか、自分の身にも覚えがあって耳が痛くなるような感じとか、うんうんよくわかるぞと共感する感じとか、そういうのの積み重ねがあるともうちょい面白かったという感触が残ると思うんだけど、平凡というか普通というか当たり前というか、毒にも薬にもならないようなあっさり感の方が印象として残ってしまった。

比較対象として適切かどうかはわからないけど、高密度のキャラクタや色とりどりの背景・場面が次々に出てきたという意味では「千と千尋の神隠し」を連想してしまったんだけど、絵としての没入感は千と千尋の方が遥かにあったなあと思います。鉄コンキンクリートもそんな感じか。 ホッタラケは、スーパーマリオで次の面に進んだ時の感じっていうのかな、お、今度はそんな仕掛けで来たかあ、とか、わーこんな色の世界なんだーというワクワク感はあったんですけどね、お話があっさりだと思ってしまったためか、没入感をあまり感じなかったのが残念であります。絵のせいではなくお話のせいだと思うんだけどな、どうかな。


アニメーション(モーション)は一部アレな部分もあったけど、概して良い方なのではないでしょうか。主人公の仕草とか、とても丁寧にモーション付けているなあと感じました。 ただ、ひょいっと飛んで着地、みたいなモーションにもう少しツメの感じが欲しいなあとか、ちょっと速すぎね?とか、そういう細かいのはあちこち感じましたけどね。
あっちの世界のクリーチャー?たちのウォークサイクルなど基本的なモーションに関しては、実はお世辞にもスヴァらしいとは言えないと思っちゃったんだけど、これは狙いなんでしょうか。設定としてああいう動きをする連中なのでしょうか。

トロッコ軌道のようなレールの上での激しいシークエンスとか、カメラがどんどん動くカットは実に凝ったショットが多く、目を楽しませてくれました。


止メのショットなどで、レイアウトがなかなかいいなあ、と思ったカットも多かったんだけど、これはどのようにレイアウトを決めていたのでしょうか。この作品の背景はいわゆるアニメの背景、「美術」と呼ばれるものなわけですが、美術を作るということは通常は原画マンによる背景原図が必要なわけで、つまり原画マンがレイアウトを切るわけですが、この作品ではアニメなら作画になる部分が全てCGになっているわけで、ではCG屋がレイアウトを切っていたのかというとそうも思えない。 ということは、作画するわけではないけど手描きの作画マンがレイアウトを切り、原図を美術さんに渡し、CGのアニメータにもレイアウトを渡し、それに沿って作っていくようなやり方だったのでしょうか。 この辺のパイプライン、知っている方がいたら教えて下さい。


シェーディングは、もうちょっと「絵っぽい」感じにした方が背景に馴染むというか、落ち着きやすい気がしたんですがどうでしょうかね。全般的にとても綺麗な、柔らかい、ラブリィなシェーディングでしたが、ちょっとCG寄り過ぎた気もするわけです。どうすればいいんだろう。グラデがグラデ過ぎたのかなあ。気持ち階調を飛ばしてやればいいのかなあ。

環境光の影響も、もうちょい強くてもいいのではないか。 というか、そもそもインダイレクトライティング系のことはやっていたのでしょうか? それとも普通にスポットや点光源や平行光源によるダイレクトライティングのみ? カゲの部分に環境の色がもうちょっと入るといいのかなあ。FGっぽいカラーブリーディングがあればいいのかなあ。 カゲ部分が黒っぽい、濁った感じがする部分が多くて、その辺がちょっと気になってしまったのです。
たぶんアンビエントオクルージョンを多用しているんだと思うんですが、AOが強すぎるのも一因なのではないかと思いました。AOの影響が遠くまで届き過ぎている。あるいはアンビエント部分だけではなくディフューズな部分にも一緒くたにAOを乗算したときのような濁った感じが出ている。そんな気がしました。 例えとして適切かわからないけどピクサーの作品とか Pigeon:Impossible の感じみたいな、環境光の影響によってキャラがその世界に実際に居る感じがもう一歩出ればいいのになーと思ったんですがどうでしょう。


フェイシャルエクスプレッションは大いに研究・改善の余地があるでしょうね。いい表情もいっぱいありましたが、概して言えば記号的だと思いました。嬉しい、悲しい、びっくりなどの表情が、ベタと言っていいのかわからないけどいかにもな感じがして、微妙なニュアンス・感情の機微が表せているとまでは言えないと思いました。 非常に乱暴で悪い言い方をすれば、「はい、悲しい顔ですよー 今私は悲しいということで了解してくださいねー」 みたいな感じとでも言うかね。 表情が動く時のエンベロープぐにゃぐにゃ感も、若干気持ち悪い。

その表情になる一瞬前の、いわば予備動作的な瞬間の顔を研究するともっと豊かな表現になる気がしているんだけど、どうですかね。驚きの表情の前の一瞬の眉の動きとか、どのパーツ・どの筋肉が一番先に動くのか、とか。いや、なんとなくですが・・・。
ちなみに SIGGRAPH ではベンジャミンバトンのCG顔の話を色々聞いてきたわけですが、Digital Domain の人は、目の動きや舌の動きなどを学術的に死ぬほど研究しましたみたいなことを言っていたと思うんですよね。ベンジャミンはリアリティを追及するためにやっているわけで、同じことをホッタラケでやったらかえっておかしくなるだけでしょうが、そういう研究や観察から得られたことを、それこそ「記号化」して、あるいはアニメスタイルもしくはCGアニメスタイルに昇華できれば、もっといいフェイシャルになっていくんじゃないですかねーなどと勝手に考えています。 アニメはフェイシャルに限らず全ての要素を記号化してきたことで成り立ってきた映像ですし、積極的に記号を活用すべきだとも思うんですが、記号化のみに頼った表現では説得力に欠けるだろう、と。


衣服の表現も課題でしょうね。あの、CG独特の、丸っこくて曖昧な形の、ゴムのようにぐにょぐにょする服。 難しいだろうけど、これはいつか克服せねばなるまい。 例えフォトリアルを目指しているわけじゃなくとも、いつまでもこのゴム服でいいわけはない。縮んだ時のシワや伸ばした時の引っ張りテンション感、服がただ体と一緒に変形するのではなく服の中を体が滑っている感じ、などを、リアルではないCGアニメ的な表現としてどう落とし込むか、ということでしょう。 主人公の白い服も特に肩のまわりはゴムゴムしていて、背中から見ると顕著でした。敵の大将の服も同じ。お父さんのスーツ(背広)もそう。 スーツっていつもこうなるよね。肩から襟にかけてのラインにテンションが足りないのかなあ。 いやー難しいだろうなあ。

SIGGRAPH では UP の服についてピクサーの人が講演してました。仕立て屋のように服をちゃんとパーツに分解して、つまり縫い目のラインで分かれているUV開きのような状態で設計してモデリングしているようでした。これをどうデフォーメーションさせているのか、クロスシミュレーションはもちろんやっているんだろうけどシミュレーションだけで動いているのかどうかなどは、よくわかりませんでした。ただ、そのキャラ特有のプロポーション(シルエット)を保つために、実在の服ではあり得ない縫製ラインで設計しました、みたいな説明があったと思います。





とまあ、思いついたことをダラダラと、しかもなぜか上から目線で書いているようで気が引けますが、まあ自分のブログだからよかろう。 ともかくもこの密度、そしてそこから想像できる作業量を思うと、ひたすら脱帽します。 しかも、丁寧にやりましたという感じが現れているっていうのは、とてもいいことですよね。売れるといいですね。日本でもこういうCGアニメーション映画をもっと作ろうという機運になれば、楽しい仕事もいっぱい発生しそうですからね。


Maya で作ったそうですが、レンダラはメンタル霊なんでしょうか?
服の揺れなどは Syflex なんでしょうか?
シーンごとのライティングの統一など、どういうシステムでやったんでしょうか?
美術背景で3Dカメラアニメーションの時は、3Dからアタリ出して美術描いたんでしょうか?
それはカメラプロジェクションマップなんでしょうか? それとも普通にUV開いてそれに美術を描いてもらったんでしょうか?


聞きたいこと山ほどある。
誰かスタッフの方、俺とお友達になって下さい。
エンドロールではN谷さんくらいしかわかるお方がいなくて。
っていうかエンドロール速いよなあ。もうちょいじっくり見せてくれよ。
あ、エンドロールにリズム&ヒューズが出てましたね。R&Hは何をしたんでしょうか?



同僚と二人で行ったのですが、奴はわりと絶賛。 俺は超辛口。
いつものことだな。 エラそーですいません。




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コメント

どもども、観られたのですねw

書かれている所は自分でも思う部分はありましたね。
ただ、こういう大型の物ですと
時間との戦いが顕著にあって
難しいところではあるのですが
精神的にもww

びあーでも飲みながら色々とお話できまっせw

投稿: N谷 | 2009年8月16日 (日) 13時59分

げげっ N谷さん本人ですかっ
読んでたんですかっ

すいませんすいません勝手なこと言ってすいませんエラそーにすいません
あー まさかスタッフ本人が読んでいたとは
Maya の人のくせにw

ぜひビールやりましょう。質問攻めにします。連絡しますね。

投稿: junki | 2009年8月16日 (日) 21時15分

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